近視を治す!角膜矯正コンタクトレンズ
寝ている間に角膜矯正
眠っている間に特殊なハードコンタクトレンズをつけ、
日中は裸眼で見えるようにする「オルソケラトロジー」という近視治療が、試みられている。
東京都の女性(30)は2002年、大学病院での研究治療で、この矯正方法を始めた。
この治療に使うレンズは、通常のハードコンタクトレンズと素材は同じだが、
黒目をすっぽり覆うほど大きく、中央が角膜のカーブより平らな特殊な形(図)をしている。
眠る前にこのレンズをつけ、起きたら外す。レンズの形に合わせて平らに押しつぶされた角膜の形は、
すぐには戻らない。光の屈折度が変わり、正常に見えるようになる仕組みだ。
オルソケラトロジーは「角膜の矯正治療」を意味する。
通常のハードコンタクトより一回り大きいオルソケラトロジー用のレンズ(右上)
女性は両眼とも0・1以下のやや強い近視だったが
、夜中にレンズをつけるようになって1週間で、視力が1・2に回復した。
「春先などは花粉症がひどく、昼間のコンタクト装着は無理。私には、この治療はぴったりです」と話す。
難点は「寝ている間、まぶたがゴロゴロすること」。
近視の強い彼女は、「夕方には0・6ぐらいに戻ってしまう」という。
東京女子医大東医療センター(東京・荒川区)眼科教授の松原正男さんによると、
この治療は1960年代に海外で始まったが、効果が低く、定着しなかった。
目に優しいレンズ素材の開発が進み、2002年に米国で夜間装着が認可され、広がり始めた。
日本ではまだ承認されておらず、開業医が個人輸入して実施しているところでは、
自費診療で両眼で20万円前後かかる。
数社のメーカーが大学病院などで治験(臨床試験)を終えたり、行ったりしているという。
近視や乱視が強い場合には向かないが、軽い近視なら
「使用した人の約8割が『満足』と答えている」と松原さんは話す。
この治療の最大の短所であり、長所でもあるのは、「治療をやめれば元に戻る」ことだ。
安定した視力を保つには、基本的に毎晩続けなければならない。
治療をやめれば、「ほぼ1か月で元の視力に戻る」(松原さん)。
後に老眼になった時のことを考えると、角膜を削って元に戻せないレーザー手術より有利、との声もある。
一方、中国や台湾では、レンズ装着で感染症を起こし、失明した例もある。
成長期の子供では将来への悪影響を懸念する眼科医もおり、まだ不明な点が多い。
(2006年10月12日 読売新聞)
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