近視 レーシック 手術の医療現場
角膜をレーザーで削って近視を治す治療が、広がりつつある。
東京都の主婦(32)は、強度の近視で、裸眼視力が左右とも0・04。乱視もかなりあった。
ハードコンタクトレンズは、目がゴロゴロ痛み、使い捨てソフトレンズでは、あまり視力が良くならない。
眼鏡をかけると頭痛がし、「化粧の際、外すと顔が見えないのも嫌」だった。
正確なレーザー治療を行うため、慎重に照射位置を決める根岸さん(右、慶応大病院で)
先月、東京・信濃町の慶応大病院で、両眼のレーザー治療を受けた。最もよく行われている「レーシック」という方法だ(図)。
角膜の表皮を薄く切ってはがし、その下の角膜にレーザーを数十秒間、照射して平らに削った後、
はがした表皮を再びかぶせる。角膜の丸みを減らし、屈折度を弱めて光が奥で焦点を結ぶようにする理屈だ。
日帰りで、手術は点眼麻酔のみで20分ほどで終了。1週間後の検診で、視力は1・2だった。
「眼鏡なしで、こんなによく見えるのが不思議な感じ」と喜ぶ。
近視手術には保険はきかず、医療機関によって料金が異なる。
検査も含め約60万円の費用の半分は、OL時代の貯金でまかなった。
近視レーザー手術が行われるようになって約10年。
先月ようやく、レーシックの治療が国の薬事・食品衛生審議会の部会で承認され、安全性にお墨付きがついた。
同病院眼科講師の根岸一乃(かずの)さんは
「角膜の表皮を薄く切ってはがすマイクロケラトームという機器の改良などで、安全性は格段に向上した」と話す。
ただ、効果は100%ではなく、同病院では、視力が0・7以上に戻った人は92%、
1・0以上だと75%だった。元の近視が強いほど、確実性は低くなる。
治療前の矯正視力より悪化する"失敗"も、一般に1%程度起きるとされる。
別の病院で昨年手術を受けた男性(36)は、角膜を削った際の不具合で片方の視力が0・2しかなくなった。
もう一方は2・0とバランスが悪く、車の運転もできなくなった。
パソコン仕事の多い別の男性(43)は、手術で視力が1・5になった反面、
遠視気味で手元が見づらくなり、作業用の眼鏡が手放せない。
根岸さんは「近視手術には限界もあることを知ってほしい」とくぎを刺す。
手術した目は元には戻らないだけに、慎重に考えたい。
(2006年10月11日読売新聞)
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